おしゃべり蔵元参謀の駄弁

陸奥国 津軽の西の地より、おしゃべり小太り参謀が叫ぶ。

【『強要』するな『口説いて』落とせ】

本日より1週間、横浜の百貨店様のお酒売り場で試飲販売会をやらせていただきます。


百貨店様にいらっしゃる方は、年代も好みも様々で、こういう広い顧客層の方々と直接お話できるのは大変貴重な機会です。


しかし、時には歯がゆいような、どうしてこうなってしまうかなぁ、と思うような状況に直面することがあります。

 

先日とある飲食店様にて蔵元イベントを開催させていただきました。来てくださった方々はそのお店の常連さんから、「蔵元が来るってSNSで見たから来たよ」という方まで様々。


こういった日本酒イベントには日頃から日本酒を召し上がり、お勉強をされ、更なる知識を身につけたい、という、こっちが負けそうになるくらい熱気に溢れたお客様が多くいらっしゃいます。


「お米は?酵母は?…なるほど!こういう味わいか!」と分析しながらお飲みいただき、我々に表現してくださるお客様がいらっしゃいます。


蔵元としては、飲み手のニーズを受け取れ、たとえ感じ方は違くとも、思いもよらなかった新たな発見につながる、大変貴重な時間です。


しかしそんな日本酒熟練者の方とのお話をしている時、ふと周りを見ると、圧倒されたような、一歩引いているような、遠慮しがちな、そんなお客様を見かけることがあります。


「いかがでした?」「どれがお好みでした?」と伺うと、若い方はもちろん、ご年配の方でも「私、よく日本酒ってわからないんです」「なんか難しいイメージがあるので、なんて表現すればいいのかわからないんです。すみません」など、正直に打ち明けてくださいます。


そんな方には「全然難しく考えたり、誰かに表現する必要なんてないです。気軽に楽しんでいいんですよ」と断言してあげています。すると安堵の表情を浮かべられ、緊張が解けていくようです。


「普段はどんなお酒を飲まれますか?」「今お席で食べているお料理は何ですか?」と聞くと、色々と普段のご自身の酒ライフについて話してくださいます。そこへ対してオススメをする、というように歩み寄ります。


日本酒は文化・歴史の賜物であり、出来上がるまでの工程も複雑。知れば知るほど奥深く、専門性が高い商材ゆえ、知的好奇心を満たしてくれるものでもあります。


しかし忘れてはいけないのが「嗜好品」である、ということだと思うのです。「口が老いる日まで好きな品」と書く通り、その好みは変え難く、千差万別。人それぞれに、それぞれの楽しみ方があっていいんです。


極端な話ですが、「これ美味しい・これ美味しくない」という飲み方でも、「使用米や酵母をきちんと知った上で飲みたい」という飲み方でも、どっちでもいいんです。みんな正解です。ただし絶対にやってはいけないのは、どちらの立場であっても、他人に「俺の方が正しい!お前もこっち側に来い!」「酒っていうのはこうやって飲まなきゃいけないんだ!」と強要してはいけない、ということです。


初心者の方が身構えてしまうほどに、飲んだら自分の言葉で表現したり、語らないといけない、という空気感が今の日本酒の飲み手の方の中で広まっているのかなぁ、と感じ、なんだか悲しくなってしまいました。


私は、どんなに業界の重鎮・有名人であろうが、誰になんと言われようとも、日本酒業界を「初心者冷遇」な業界にはしたくないです。「絶対にさせてなるものか!」と思っています。これだけは絶対に譲れません。


普段の食事と気軽に楽しめる「とっつきやすい」お酒で、興味が出てきて「能動的」に探求すればするほど奥が深くて面白い。そんな魅力的な商材なんだ、と多くの方に知ってもらいたい、と思っています。


日本酒を提供する側の蔵元や飲食店の皆様、そして熟練の飲み手の皆様、初心者の方をお見かけになりましたら、自分の持っている知識を押し付けて自分だけ気持ちよくなるのではなく、優しくわかりやすく寄り添って教えてあげて、みんなで楽しく日本酒を飲みましょう。


強引に自分のところへ引っ張ることなく、優しく「口説いて」仲間を増やしていけたら、みんな嫌な気持ちにならなくて良いですよね。


ちなみに私の立場は、お酒の背景を知りながらも楽しく飲むことを忘れない「ハイブリッド型」

 
いいとこ取りで調子の良い小生。

今日も絶賛チームメイト募集中です!